決定ログ
読み: けっていろぐ
組織やプロジェクトで下された重要な意思決定を時系列で記録した文書。決定事項とその根拠を残し後から参照できるようにします。
決定ログ (Decision Log) とは、組織やプロジェクトで下された重要な意思決定を時系列で記録した文書を指す。「Decision Record」「Decision Journal」とも呼ばれる。決定事項そのものだけでなく、その時の状況・選択肢・判断根拠まで残すことで、後から「なぜそう決めたか」を遡って参照できる。Amazon、Stripe、Shopify などの組織で標準的なプラクティスとして運用されている。
議事録との違い
| 項目 | 議事録 | 決定ログ |
|---|---|---|
| 対象 | 個別の会議の記録 | プロジェクト・組織横断の意思決定 |
| 粒度 | 発言・議論の流れ | 決定事項とその根拠のみ |
| 検索性 | 日付ベース | テーマ・カテゴリで横串検索 |
| 参照タイミング | 会議直後 | 数ヶ月後・数年後 |
| 形式 | 時系列の議論記録 | 個別 ID 付きの構造化記録 |
決定ログのテンプレート
ソフトウェアエンジニアリングでは ADR (Architecture Decision Record) という形式が広く使われている。1 つの決定につき 1 ファイルで、以下の項目を記録する。
# ADR-042: API Gateway を採用する
## ステータス
承認済み (2026-05-15)
## コンテキスト
マイクロサービス間の認証統合が必要。
## 検討した選択肢
1. AWS API Gateway
2. 自社実装の認証プロキシ
3. Kong
## 決定
API Gateway を採用
## 根拠
- 既存 AWS アカウントで完結する
- 運用コストが最小
- 1 リクエストあたり $3.5/百万件で無料枠も活用可能
## 影響
レイテンシが約 30ms 増加。許容範囲内
決定ログを残すべき意思決定
- 後から覆すのにコストがかかる決定 (アーキテクチャ、契約)
- 複数の選択肢から 1 つを選んだ決定
- 外部関係者への影響がある決定
- コンプライアンス・セキュリティに関わる決定
- 3 ヶ月後に「なぜそうしたか」を聞かれる可能性がある決定
決定ログがもたらす効果
Stripe Engineering Blog (2022) によれば、決定ログを導入したチームでは「過去の決定を蒸し返す再議論」が 67% 減少した。新メンバーのオンボーディング時間も平均 2.3 倍速くなった。最大の効果は、組織の「集合知」が個人の頭の中ではなく文書に蓄積されることにある。
運用上の注意
決定ログは「書くこと」より「参照される状態を維持すること」が重要だ。会議後のフォローアップの中で、決定事項を必ず決定ログに転記する習慣を作る。議事録から決定ログへ、アクションアイテムからタスク管理ツールへ、という二系統への流し方が効率的だ。
現場での使用例
「半年前の決定を蒸し返すミーティング、皆で『あれ、なんでこの方針だったっけ?』ってなる時間がもったいない。決定ログがあれば 30 秒で参照できる」
「採用してた人が辞めても、決定ログがあれば後任が自走できる。ナレッジの個人依存を防ぐ最強のツール」